今回、ある質問者さんから相談を受けて、800m1分台を出すためにはどうすれば良いのかを考えました。
ベストタイムから現状の把握
質問者さんは、大学生で、専門は中距離で持ち味は短距離タイプです。
ベストタイムは、
100m12″45
200m25″05
400m53”77
800m2’00″87
1500m4’36”
5000m17’30”
参考として、マイルのラップ52″0、600m1’26″台です。
マイルのラップタイムは、バトンの受け渡しだと信憑性に欠けます。
しっかりと400mになるラインで計測したものであれば、自信を持てば良いです。
400mのレースではスタブロを使ったゼロスピードからになるので、マイルのラップよりも少し遅くなります。
私もマイルのラップ49″3、400m50″54なので約1″違います。
まだ大学生とのことなので、400mの記録向上が800m1分台の鍵になると思います。
私の400mベストは24歳時です。大学時のベストを0″1更新しました。質問者さんの場合、年齢は問題ではありません。
800m選手が400mの記録を伸ばすためにやるべきこと。
300m加速走の絶対スピードを高めることです。
私は、短距離が苦手で長距離もそんなに得意ではないです。800〜1000mが持ち味を出せる距離です。
私の各距離ベストは、
100m加速10″6
100m11″8
200m23″5(11″75)
300m加速36″6(12″2)
400m加速49″3(12″42)
400m50″54(12″63)
600m1’22″5(13″75)
800m1’54″6(14″32)
1000m2’30″1(15″0)
1500m4’01″41(16″1)
この( )内のように、100mあたりのペースにだんだんと加算されていきます。300mが遅いと必然的に全て遅くなります。
強靭なスピード持久力があっても300mより長い距離は300mのスピードを上回ることはあり得ません。
質問者さんと第三者(私)の各距離のベストタイム比較で課題を確認
ここで、質問者さんと私を比較します。
400m53″7と50″5で3″2=100mあたり0″80差
600m1’26″台と1’22″台で約4″0=100mあたり0″66差
800m2’00″台と1’54″台で約6″0=100mあたり0″75差
1500m4’01″と4’30″で約29″=100mあたり1″93差
質問者さんは、600mのタイムが最も良く、400mが悪いです。800mと600mの差と比較すると100mあたり0″5くらいの差に収まりそうな感じですね。400m52″5くらいが予想されるタイムです。
1500mは参考です。短距離タイプの質問者さんと、中距離タイプの私では持ち味が違うので、ここで差が大きくなりますが、質問者さんの持久力はまだまだ改善の余地があります。
600mのベストタイムから決定する、記録狙いの時の600m通過タイム
質問者さんは、600mを1’28″5あたりで通過してラスト200mを31″前半で抑えれば1’59″後半の記録が出た可能性があります。生でレースを見たこともありませんし、持ちタイムと比率だけの判断ですが。
私は600m1’24″5で通過して1’54″6でした。600mのベスト+2″0くらいの通過です。
600mのベストが早いほどレース展開の600m通過に余裕が持てます。600mを伸ばすには400mのスピードが必要ですし、400mを伸ばすには300mのスピードが絶対必要です。
300mスプリント能力向上にはさらに速い動きの日常化が不可欠
300mを伸ばすには100m加速走で速い動きを反復して、動作を身体に馴染ませる必要があります。純粋な短距離選手ではないので、本数をこなしながらスピードとスピード持久力を養う練習メニューが必要です。
メニュー例は、
加速走100m×4×3+300m
目標タイムはマイルのラップより速いペース(52″0なら13″0以内で。)
120m歩き戻り約2′
セット間10’rest
ホームまたはバックストレートで実施
加速区間10m、ゴールラインも走り抜ける約10m、なので戻る時は120m
3set目はスピード上げれるなら上げる。設定を0″5速くして12″5目標で。
10’rest後
ラストの300mは全力で。入り100mからペース配分なし、突っ込んでタイム狙う。
冬季トレーニングから移行期
積雪のある地方では自然との戦いもあります。低温時は無理にトラック練習でスピードを上げない方が良いです。動きも悪くなりますし怪我をしては元も子もないですから。
悪天候でも確実にできる、ATペース走をメインにして有酸素運動と無酸素運動量の境目=閾値を引き上げるトレーニングをしましょう。このペースは800mのタイムで決めるのではなく、長距離種目のレベルで決まります。私のホームページでは、5000mの記録でレベルを選択して、練習持久的なペースを決定することができます。本来、心拍数で管理すべきですが、心拍数を計測しなくてもだいたい狙ったゾーンに入るよう設定しています。
心拍計と言えば、かつてはpolor心拍計が主流でした。最近はGARMINが人気のようですね。必要最低限の機能で安いものを選ぶと良いでしょう。ハイエンドモデルはお金がある大人が買うものです。壊れたら、数年ごとに中古など安いところを探して同じモデルを何回か買っています。
ATペース走の練習メニュー
5000m×2(心拍80-85%設定)+短いレペまたは本数少ないインターバル
プラスのレペとインターバルは気温によってアレンジしてください。
寒い時は、
1000m×1を全力近くで。
または
100m×10×2(1500mレースペース→800mレースペース)17″→15″切
トラックなら直線でタイム計測、コーナーを歩きつなぎ、加速区間10mと走り抜ける10mあるので実際80m歩き。約1分強でつなげます。速い動きを分割して何回も走っておくことで、シーズンが近づいた時にスムーズにトラック練習に移行できるように、筋力とスピード感を最低限やっておくイメージです。
あったかくなってきたら、次のどれかを考えてやります。
200m×5(jog200m)を800mレースペースで。
600m×1全力
400m×1全力
100m×5、300m全力
などなど、全力近く出し切るメニューを加えることで、その日の練習を締めくくります。
体調によって、プラスαを無くしても良いですが、その時は流し100m×5で動きを整えます。
スパイクは移行当初はいきなり履かずに、スピードに慣らしていく過程で無理せずに履いてください。
ロードでの練習
メニュー表を参考にして、距離とペースを決めて、持久力向上の目的で走り込めば良いと思います。欲張って距離を延ばさないように注意です!
距離を延ばすより、後半のペースを上げる方が意味があります。
基礎的な持久力は、トラック練習の本数を反復する時に活きてきます。
予選、決勝と同じ日に走り、さらに決勝のタイムを落とさないことが大切です。
短距離タイプの800m選手でよく見られるのは、一本だけならタイムが出せるけど、1日2本目はスパートが効かずに撃沈するタイプの選手です。速いけど弱い選手です。
私個人的には、大会のタイトルよりも記録を優先してきましたので、良い記録が出せればそれもアリだと思います。
日体大、順大、筑波大などの関東のレベルが高い大学記録会や自分より格上の選手が出場する記録会等で1日1本、好記録を狙うのも一つのスタイルだと思います。また、定期的にそこまで遠征できる経済的余裕があれば、です。
レベルが上がるにつれて、速い選手は1日2本走れるものです。日常のトレーニングを高強度で反復することが必要です。そのためには、基礎的な持久力も必要になってきます。
セフルケアをしっかりと
舗装路等硬い路面での練習は疲労が抜けにくいです。疲労が溜まるような練習をした時は、セルフマッサージ、ストレッチを入念に行ってください。
→セルフマッサージの説明
疎かになりがちな瞬発的な動作で上手な身体の使い方を習得する
特に走り込みをしていると疎かになりがちです。ジャンプ系の補強を定期的に取り入れて、スピードの基礎となる動作も練習しておきましょう。
トレーニングの五原則を忘れないで!
スプリント能力だけではダメ
走り込みだけでもダメ
スピード持久力強化のメニューは専門練習として一番大切
瞬発的な動作も必要
筋トレも必要
柔軟性の維持向上も必要
計画的な休養も必要
自分の持ち味を活かした戦術、レース展開、トレーニングメニューがあります。
まとめ
今の自分に合ったメニューは必ずあります!
今回、ある質問者さんからの相談に答える形でそのまま記事にさせてもらいましたが、アドバイスする際の思考過程をそのまま書きました。
15歳〜37歳まで、800mを150本以上走ってきた私なりの考えです。もちろん、他の方へのアドバイスなら他のアプローチがあって然るべきです。
考え方のひとつとして参考にしていただければ幸いです。
質問者さんの自己ベスト更新、800m1分台を心から願います!
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