ペース走のペース設定の考え方

ペース走のペースをどのようにして決めていますか?

顧問に言われたから、先輩たちがやっているからという理由で、何の根拠もわからないままペース走のペースを決めて走っている人は少なくないと思います。

昔の私もそうでした。

4’10でこなせたから、次は4’05でという具合でした。少し余裕を持って走れるか走れないかのギリギリのところでやっていたように思います。なんともあいまいな決め方です。
 
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適切な練習ペースは心拍数で決定する

人間の心臓は、自分の意思とは関係なく動く【不随意筋】です。一方、骨格筋は【随意筋】です。意識して思い通りに動かすことができます。

心拍数は、寝ている時の安静状態で最も低くなります。激しい運動をしている時に高い心拍数になります。

以下に、大まかな心拍数の変化と運動の負荷を示します。1分間での回数です。心拍数には、個人差があるので数値は参考程度にしてください。

一般的な20歳前後の選手の最大心拍数を200回/分と仮定したものです。

40〜50回、睡眠状態
50〜60回、安静
70〜90回、歩き
90〜100回、速歩き
100〜120回、ゆっくりなジョギング
120〜130回①ややゆっくりなジョギング
130〜140回②適度なジョギング
140〜150回③速めのジョギング
150〜160回④かなり速めのジョギング
160〜170回⑤適度なペース走
170〜180回⑥ペース走より速い
180〜190回⑦レースペース(レース序盤)
190〜200回全力運動(レース終盤)

①〜⑦で番号をつけてある範囲が、私のホームページで紹介している練習メニューで走る範囲になります。

タイム設定一覧表

 
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ペース走で設定すべき範囲は④⑤⑥

1分間の心拍数
150〜160回④かなり速めのジョギング
160〜170回⑤適度なペース走
170〜180回⑥ペース走より速い

④は余裕を持った長めのペース走
⑤が最も基本的なペース走
⑥はレースよりも遅いけどペース走としては速めの練習

それでは、以下にそれぞれについて、練習メニューとともに説明します。
 
 

④余裕を持った長めのペース走

最大心拍数の75〜80%を狙います。

5000m
15’00の選手で3’57″〜3’38″、16〜20km
17’00の選手で4’29″〜4’07″、10〜12km
19’00の選手で5’00″〜4’36″、8〜10km

走力の低い選手は、このゾーンであまり長く走る必要はありません。もう一つ上のペースで練習をする方が効果的です。

14分台を目指している選手は、定期的に長い距離を走る必要があります。淡々とリズミカルに、一定ペースで省エネ走法を研究しながら走ることでランニングエコノミーの改善を狙います。

地面を蹴らない、コンパクトな腕振り、速めのピッチで筋力の負担を減らすなど、自分でテーマを考えて取り組みましょう。

ランニングエコノミーとは、フォームの無駄を省いたり無駄なエネルギーをより使わないようにすることです。

このゾーンは、有酸素運動の領域です。乳酸が急激に溜まり始めるAT=無酸素性作業閾値(いきち)の手前にあたります。有酸素運動としてはかなり高いレベルの運動になります。
 
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⑤最も基本的なペース走=ATペース走

最大心拍数の80〜85%を狙います。

AT、無酸素性作業閾値は最大心拍数の80〜85%で出現する人が多いです。レベルが上がればもう少し高めの選手は存在しますが、トレーニングの強度設定としては、高すぎるよりも少し低いくらいが安全確実です。ゆとりがあれば後半ペースアップをして負荷を調整すれば良いです。

このゾーンは無酸素運動と有酸素運動の境目と言われています。スピードが上がるにつれて血中乳酸濃度が徐々に高くなっていきますが、ATを境目として急激に乳酸の溜まり方が上昇します。

この境目付近でトレーニングすることで、効率的に持久力を強化することができます。

ATペースは20分を2回行うことで充分効果があるそうです。メニューとしては20分+20分、つなぎは心拍65〜70%のjog約5分です。その日の体調によって5分歩きでつないでも良いです。後半をしっかり走る方が大切です。

設定ペースで前半をイーブンで走り、心拍が85%未満であれば、つなぎjog後の後半を設定-5″で走ると良いです。

走力に応じて、タイムが20分前後になるように距離をキリよく設定して、つなぎはjog1000m〜1200mとします。

5000m
15’00の選手で3’38″〜3’28″=設定3’30”
6000m×2、つなぎ1200m4’21″〜4’12″ペース

17’00の選手で4’07″〜3’56″=設定4’00”
5000m×2、つなぎ1000m4’56″〜4’45”

19’00の選手で4’36″〜4’24″=設定4’30”
4000m×2、つなぎ1000m5’31〜5’19

 
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⑥レースよりも遅いけどペース走としては速めの練習

最大心拍数の85〜90%を狙います。

ATより高いゾーンで走り続けます。ATより高いですが、最大酸素摂取量ペースよりも遅い範囲です。

感覚的にはハーフマラソンのペースよりも少し速めです。ハーフマラソン前のレースペースを確認する時は、これより数秒落とせば練習にも活用できます。

ちなみに、フルマラソンのペースはATを超えることは無いと言われています。先の項目⑤のペースに近いと考えられます。ただし、きちんと走り込んで身体の準備ができている選手に限ります。

5000m
15’00の選手で3’14″、6000〜8000m
17’00の選手で3’39″、5000〜7000m
19’00の選手で4’05″、4000〜6000m

この練習の後に、10分ほど休憩してからレペティションを追加するとトレーニング全体のバランスが取れます。

+1000m×1〜2(10’rest)
3000mレースペース前後でリズム良く走ることで筋肉と心配機能に刺激を入れます。これは最大酸素摂取量ペースよりも速いスピードになります。
 
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まとめ

ペース走と言っても幅広いです。

私は、jogでさえもペースを決めて走るべきだと考えていますので、ペース走と言えます。ほとんどの練習はペースを決めるべきなのです。自分に合ったペース=運動強度を把握して、その時々に応じたペース設定をすることが大切です。

疲労回復促進を目的とするjogでは、筋力を休ませつつも軽い有酸素運動をすること。

基礎を固めるjogでは遅すぎないペースでリズム良く一定ペースで走ること。

そして、ATペース走では有酸素運動と無酸素運動の境目を狙うこと。そこをなるべく長い時間維持しながら効率的なランニングフォームを研究することが目的になります。

しかしながら、中学生や高校生が全員心拍計を持てるかと言うとそれは難しいことです。中学生では、時計すら持ち込み禁止の学校もあります。

私のホームページでは、心拍計を使って心拍数を測らなくても、3000mや5000mの持久系の種目の記録(予想)から、それぞれの心拍数割合のペースを算出しています。

これは、自分の測定結果、教え子達の測定結果を基準にして、計算したものです。過去に何百人もこの方法でアドバイスしています。

幅広いレベルの選手を無作為に選び、心拍数を確認したところ、ほとんど当てはまっています。外れているのは、最大心拍数が極端に低い人や極端に高い人です。これらの人は最大心拍数の測定が必要になります。

心拍計を持てない多くの若い選手たちにも、心拍数管理を基本とした、その人に合った練習メニューと設定ペースの提案が可能になっています。

今まで、このようにペース設定をしたことがない選手は、ぜひ一度試してみてください。

自分に合った練習メニューとペース設定を検索する。

polor心拍計