根拠の無い根性練習と根拠に基づく科学的トレーニングの違い。

根性練習と科学的トレーニング

根性練習とは、自分のレベルより高い設定で、たくさんの量をとにかく毎日休みなく行う事で実力がアップすると信じている練習方法で、そのような理論的ではない無謀な練習を行うことだと私は考えています。絶対にやりたくない練習です。

一方、科学的トレーニングとは、測定した客観的な数値や記録を元に、その人に合わせた練習内容や負荷の設定を適切にして、必要最小限の量を高い質で行うトレーニング方法だと私は考えています。当然、適切な休養日を設けます。

にわかに信じ難い事ですが、現在でも中学や高校で根性練習と思われる練習を生徒にさせている顧問やコーチが存在していることです。時々相談を受けます。

これはとても残念なことです。生徒は先生を選ぶことができません。私立高校ならまだしも、公立高校の場合は先生に転勤があり入学した学校に良くない先生が転勤してきたりする可能性もあります。

陸上競技の練習を、部活動で先生に言われることを全て信じて取り組む事は非常に危険です。基礎的な知識を自分でしっかりと勉強しておくことが自分自身の身を守る術です。

 
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科学的トレーニング理論を自分の練習に取り入れて、効率的に練習する。

今まで、人に言われたことだけをやって来た選手は、これをきっかけにして勉強を始めましょう!

トレーニングの5原則
心拍数と運動強度
全力で走る時間で異なるエネルギー供給系の違い
ポイント練習をする頻度(何日に一回という回数)
超回復の原理
可逆性の原理

まずはこのあたりを押さえておきましょう。
 
 

トレーニングの5原則

この5つを守ってトレーニングしないと効率的なレベルアップ走るできません。

継続性、個別性、自覚性、漸進性、全面性の原則です。詳しい説明はこちらの記事でします。
 
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心拍数と運動強度

中学生と高校生は、知識として知っておくと良いです。大学生や社会人は、心拍計を利用して練習することをお薦めします。

安静時の心拍数は40〜60回/分です。早歩きだと90〜100回/分くらい。ゆっくりjogすると110回くらい〜ペースアップして行くと120、130、140回と上がって行きます。

しかし、心拍数には個人差があります。同じペースで走っている誰かと同じ心拍数だからと言って同じレベルという訳ではありません。最大心拍数は個人ごと違います。最大心拍数からの割合で運動強度を測ります。最大心拍数200回の人Aと、220回の人Bがいたとします。ともに心拍数100回なら、Aは50%、Bは45.6%です。Bの方が少ない力で同じペースで運動をしているので、レバルが高いと判断できます。

詳しい測定方法や説明はこちらをご覧ください。
 
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全力で走る時間で異なるエネルギー供給系の違い

陸上の種目で説明すると100mと5000mでは使われるエネルギーが違います。また、得意な距離によって筋肉の質も異なります。速筋と遅筋です。先天的な遺伝によって、速筋と遅筋の割合は決まりますが、トレーニングによってもある程度の割合は変化するようです。

エネルギー供給系の詳しい説明は、こちらをご覧ください。
 
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ポイント練習をする頻度(何日に一回という回数)

ポイント練習とは、強度の高いトレーニングのことです。

では、毎日ポイント練習をすれぼ強くなりますか?

それは間違いです。高強度なトレーニングは運動によるダメージがあります。筋繊維は使うことで壊れます。それを修復することが大切です。

毎日ポイント練習を行うと、回復や筋繊維修復の時間が無く、疲労したまま次のポイント練習をすることになります。そうすると、パフォーマンスは落ちますし、余計に疲労します。これがオーバートレーニングです。

ポイント練習をする回数は、多くて週に3日、少なくて2日です。2日や3日連続で行うのでは無く、均等に間隔を開けて行います。理由は、次の項目で説明します。
 
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超回復の原理

高強度な運動により壊れた筋繊維が元の状態より強くなって回復することを、超回復と言います。

超回復に必要な時間は、48時間〜72時間です。2日〜3日です。これが、ポイント練習を週に2、3回行う理由です。

全力を出し切るようなハードなトレーニングだと、回復に3日。全力では無いけどかなりの高強度で本数や距離を多くした場合も同様です。そこまで出しきらなかったり、本数を少な目にした場合は2日です。

ゆっくりでもだらだらとかなり長い距離を走った場合も回復に時間がかかります。

筋肉痛が3日経っても治っていない場合は、やり方が良く無かったり、距離や本数が多すぎたと判断してください。また、睡眠時間が足りなかったり、充分な栄養を摂らなかった場合も回復しません。オーバートレーニングや休養、栄養面を考え直すべきです。
 
 

可逆性の原理

トレーニングをしなかったら元の状態に身体が戻ることです。ポイント練習の間隔を開けすぎたり、ポイント練習をせずにjogばかりしていても強くならないと言うことです。

毎日jogで長い距離を走る人は、大会で走る遅いと思いますが、jogを長くすることのレベルは上がります。

トレーニングはやったことに適応します。

例えば、ゆっくり長く走るLSDばかりやっているとLSDに対しては適応しますが、スピードは出しにくくなります。
 
 

科学的トレーニングのメリット

各トレーニングの理由が明確なので、目的意識をしっかり持てます。トレーニング5原則、自覚性の原則に合致します。

レベルに応じたペース設定が可能になります。段階的にステップアップすることが可能になります。漸進性の原則です。

様々なエネルギー供給系、速筋も遅筋も使う練習メニューです。全面性の原則です。

そして、その中で専門種目とするスピードやエネルギー供給系をメインにトレーニングします。個別性の原則です。

無理無くこなせる適度な質と量なので、やり過ぎによる怪我を防止できますし、無駄な時間をかけないので、その分アフターケアに気を配ることができます。体調を管理しながらトレーニングを行うので、継続的に効率的なトレーニングを積むことが出来ます。継続性の原則です。

すなわち、科学的トレーニングとは、トレーニングの5原則を全てクリアしたものと言えます。
 
 

根性練習のデメリット

自分に合わない練習量、設定ペースなので、効果が出にくいです。個別性の原則に反します。

量や時間が長いため疲れます。そして、疲れから回復する日程もありません。慢性的なオーバートレーニングに陥りやすく、常にどこかが痛く、満足なパフォーマンスをすることができません。だらだらと続けるので、こなすことに精一杯でステップアップしません。漸進性の原則に反します。怪我による中断も多くなるので継続性の原則にも反します。

痛みや疲れを、気合いだ!と一喝されて話は終わりです。指導者の押し付けトレーニングです。自ら取り組むトレーニングでは無く、やらされるトレーニングですので自覚性の原則に反します。

休養、回復練習、ストレッチ、マッサージという大切な要素が欠落しがちですので、全面性の原則に反します。

根性練習とは、トレーニングの5原則全てに反したものになりやすいです。

 
 

まとめ

学生の場合は、部活動に所属しないと大会に出れない仕組みになっています。だから、部活動の顧問が選手の運命を決めてしまうと言っても過言ではありません。すばらしい指導者に巡り会えるかどうかは運命です。私立の学校の場合は先生の転勤がほぼありませんのでこの先生に教わりたい!という学校に入学するという方法もあります。出しながら、そうできるのは一握りの選手であり、大半の選手は公立高校で顧問の先生が変わるなど流動的な状況で部活動をすることになります。

そんな時でも、自分自身の中に基礎的な陸上競技に対する知識や、そのために必要な運動生理学等の科学的根拠があればどんな先生が来ても自分で練習の意味を見出して設定ペースを調整するなど応用が効くと思います。

社会人であれば、実業団選手以外はコーチがいない状況で活動することが一般的です。関東等はランニング人口がとても多いため、ランニングクラブがありそれに所属すればプロのコーチの指導を定期的に受けることが可能です。しかしながら、それ以外の地域の戦士たちはプロコーチの指導を受ける機会は一切無いと考えられます。

自分自身で自分自身をコーチングする必要があります。

社会人ランナーは基本的に1人で練習することが多いです。がんばりすぎてしまう人は、自ら根性練習を課してしまうこともあります。とにかく毎日走る、とにかく毎日20km走る、絶対に休みを作らない、どんな時でも決めた練習メニューは絶対にこなすなど、がんばりすぎるゆえに根性練習になってしまっているパターンがあります。

学生も、社会人も共通して言える事は、練習日誌をしっかりとつける習慣を作ることが大切だということです。練習日誌は、これまでの自分自身が正しかったかどうかを判断する資料となります。

思いつきやフィーリングで練習をして、さらに練習日誌を書いていないと、調子が良い時や、悪い時が来てもなぜそうなったのか客観的に判断することができません。

科学的な根拠を勉強することが大切であると紹介しましたが、同様に練習日誌を書き続けることも大切です。簡単で地味な作業を地道に続けることが本当の根性なのかもしれません。

根性練習はダメだと言う結論なのですが、理論や根拠を知ることだけでは強くなる事はできません。頭でっかちではいけません。実行に移さないと意味がありません。

ここ1番の勝負所や、陸上人生の中でのがんばり時に、気合を入れて集中して取り組む姿勢が大事です。そして、何があってもやり通す強い気持ちが【根性】だと思います。

理論だけでは説明できない陸上競技論で説明しています。

根拠のない根性練習は反対ですが、強くなるために根性は絶対に必要です。

根性の使い時を間違えないようにしてがんばりましょう。